「鍛造」とはその字のごとく「鍛(きた)えて造る」、すなわち鋼(はがね)などの金属に大きな力をかけてつぶすことで金属の組織を緻密にし、しかも同時に形を変えて必要な形状を造ることです。
言い換えれば「金属の餅つき&粘土細工」のようなものです。
餅米は臼の中で杵に何度も叩かれることによって緻密で粘り強いお餅になります。
更にそれを丸めたり細めたり、粘土細工のように必要な形に形づくっていく。
それが鍛造(たんぞう)です。
よく「鋳造(ちゅうぞう)」と読み間違えられるのですが、「鋳造」と「鍛造」はおなじ素形材(部品の元となる素材)でも全然違います。
ひとことで言うなら
よって当然複雑な形状への対応性は「鋳造」の方が勝ります。
なにしろ「溶かして流し込む」のですから。しかし、強度面では圧倒的に「鍛造」が勝ります。
わかりやすく言うなら、「チョコレート」と「お餅」のような違いです。
さまざまな機械部品は、両者の長所・短所を理解して使い分けされています。
ひと口に「鍛造」といっても、金型使用の有無による分類(自由鍛造と型鍛造)、機械による分類、温度による分類(熱間・冷間・温間鍛造)など、いろいろな分類がありますが、アプセット鍛造というのは「成形の種類」による分類の一つです。
鍛造成形には下記のようなものがあります。
この中の「据え込み」という成形がアプセット鍛造(upset-forging)です。
「据え込み」とは:軸方向に加圧して高さを減少させると同時に断面を増大させる成形方法
しかし一般的には、素材(丸棒)の先端または中間を加熱して部分成形する工法を「アプセット鍛造」と言われます。
よく「“アプセット鍛造”と“アプセッタ”はどう違うのでしょうか?」と訊かれますが、“アプセット鍛造”というのは「成形の種類」、“アプセッタ”というのは「機械の種類」です。
この点は「鍛造機の分類」のページで説明しますが、一般的にアプセッタとは軸物の据込み鍛造をするために、軸部をグリップ(掴む)する機構と、軸方向に加圧成形する機構の2つの機構をもった、ダブルアクションの鍛造機を言います。
金型では、軸部をグリップするための割型を「グリップダイ」、頭部を据込成形する金型を「パンチ」といいます。